>> 10/25>> パリに来たら、空を見上げよ
ある日、ふと気がついた。
そういえば、パリの空は広い。
東京で見るような高層ビルが、ここにはほとんどない。
ロンドンやNYとも違う、パリの開放感。
セーヌ川がこんなにも美しいのは、空の視覚的効果によるところが大きいのではないか、と思う。
この日の空は、飛行機と遊びすぎて、少しひっかき傷がある感じ。
黄昏どきは、いうに及ばず。
>> 10/23>> カヌレ・ベイベー
昨日までの激しい雨がおさまって、今日は久しぶりの晴天。気分がいいので、エッフェル塔界隈まで散歩。
7区・8区近辺にくると、必ず立ち寄るJean Nicot通り。この付近こは、伝説のブーランジェリー:プージョラン、タルティーヌ専門店:Simple、行列のできるビストロ:コンスタンティン、イベリコ豚の美味しいベヨータ・ベヨータなどなど、とにかく美味しいお店が集中している。
カヌレで有名なパティスリー:Lemoineもここにある。日本では一時のブームが去って以来忘れ去られてしまっているけれど、パリではいろんなパティスリーで見かける。もともとはボルドーを代表するお菓子で、Lemoineも本店はボルドー。パリ支店がJean Nicotにあって、本場のカヌレが買えるのはここだけ。
レギュラーサイズのカヌレの他に、二回りほど小さい「カヌレbebe」もあって、私はこっちのほうがお気に入り。サイズが小さい分、外側のカリカリ部分が占める割合が大きいので、焦げたカラメルの香ばしさがたっぷり味わえる。
Lemoineのもうひとつのお気に入りは、ヌガー。フランスのヌガーはイタリアのそれよりもふんわりしていて、食感はマシュマロに似ている。一口サイズの個包装が一般的だけれど、Lemoineではホール状にこんもり作って、ケーキのように切り分ける。フランボワーズやシトロンのコンフィチュールが地層のように折り重なって、その中にナッツやジュレがゴロゴロ。少し頼りないヌガーのあとに、ピスタチオのカリカリッがたまらない。
カヌレは日持ちするけれど、個人的経験からいうと、お店で買ったら時間をおかずに食べたほうが断然美味しい。だから、大量に買ったbebeのうち、無事に家までたどりつけるのはごくわずか。
今日は、アンヴァリッド前の芝生でカリカリ。気がつけば、エッフェル塔を染める夕日も、カヌレ色。
>> 10/21>> やってしまった、独りFouquet's
シャンゼリゼ通りとジョルジュ・サンクが交わる、一等地。東京でいえば、銀座:鳩居堂にあたるこの場所に、5ツ星ホテルFouquet's Barriereがある。そして先日、うっかり「独りFouquet's」をやってのけてしまった。
泊まるなんて贅沢は当然できないけれど、カフェでお茶を一杯。しかも、シャンゼリゼ通りに面した赤いひさしのカフェではなく、ホテルの中にあるラウンジバーで!
最初から意図していたわけではなく、ちょっとした偶然の積み重ね。友人へのギフトに、Fouquet'sのマカロンを買おうと思って、いざホテルへ。ポーターの男性に「ホテルのマカロンが欲しいんですけど」と尋ねたら、「ラウンジバーでコーヒーか何か注文すれば、お茶うけでサーヴしますよ!持ち帰りもできると思います」。勇気づけられていざバーに行ってみたら、あいにくテイクアウトのサービスは終了したとのこと。でも、せっかく来たのに何もしないで帰るのも惜しい・・・ということで、独りFouquet'sが実現してしまったというわけ。
高級ホテルのラウンジバーというと、少し堅苦しいかなとドキドキしていたけれど、Fouquet'sのそこは想像していたよりも居心地がいい。ちょうど中庭に面していて、ガラスの向こうはテラス席。シンプルな家具は、極端なクラシックではなく、それでいてモダンすぎることもなく、その丁度いいバランスが、「ハイセンスだけれど肩肘張らない」雰囲気を作っている。あまりの居心地のよさに、カメラを出すのもはばかれる(なので、今回は写真はナシ)。
パンプルムースのジュースと一緒に出てきたマカロンは、表面にパイ生地のかけらをまとったキャラメル色。さくっという音を立てて一口・・・あまりの美味しさに言葉が出ない。サクサクっという小気味良い食感のあとに、柔らかで、懐かしい甘さ。子どものころお菓子が食べたくなったときに、無意識に脳裏に浮かぶ、あの味覚だ。少しアイスクリームの味に似ているけれど、もっとふんわり軽くて、おとぎ話のように少し儚い。
「やっぱりテイクアウトはできないのよね・・・」と、サーヴィスの男性にダメ押しで聞いてみた。
「持ち帰り用の小箱がないんです、ごめんなさい・・・でも、マカロンをご所望でしたら、近くにラデュレがありますよ」
「でも、この時間だともう閉まっているでしょう?」
「いえ、シャンゼリゼ通りのラデュレなら、夜中まで開いてますよ!」
そう言うと彼は、ペンを片手に地図を書き始めた。バーテンダーの男性も加わって、ショコラやフランボワーズのマカロンがあるとか、歩いてすぐだとか、お勧めはピスタチオだとか、何やら話が盛り上がってしまった。会話好きなパリっ子にありがちな展開。
少し話がそれてしまうけれど、パリの人々は実は世話好きだ。困っている人がいれば、声をかける。どうにも解決できない問題に直面しても、とりあえず一緒に悩んでくれる。だからといって、結局問題は解決しないのだけれど、それでも一生懸命どうにかしよう、という姿勢は見せてくれる。ただし、これはフランス語で会話をしたときの場合。英語でのやりとりだと、どうも上手くいかない。片言でもフランス語で頑張った瞬間、同じ釜のメシ・・・という意識がうまれるのか、むこうも頑張ってくれる。
グローバル化した現代、言葉の壁なんて関係ない、というけれど、言葉の壁を超えないと見えてこないものもある、と思う。Fouquet'sのマカロンを4つほおばった結果、学んだ教訓。