>> 10/05>> アートづくしの夜
10月4日は、夜更かしの夜。待ち焦がれていたパリのNuit Blanche!
この日のために用意されたアート・エキシビションが街のあちこちで催され、無料で、しかもオールナイトで一般公開される。いわば、夕暮れから明け方けまでの、夜通しアート・マラソン。この日に備えて、バスも一晩中運行する。
2002年からスタートしたNuit Blancheは、年を重ねるごとにグレードupしているらしい。今年はカルティエ財団現代美術館の館長が総合プロデュースをつとめているせいか映像やデジタルメディアを使ったchallengingな作品が多い。作品の数は全部で70。いくらオールナイトでも、全部見て回るには一晩じゃ足りない!
Gare de Lyon駅前。ボリウッド映画の撮影を兼ねた参加型インスタレーション。 | |
とくに気に入ったTop 3。
シテ島・警察庁で開かれていたJean-Pierre Formicaの「Sentinelle」は、塩田に沈めたトルソの集合体。トルソのまわりに塩が結晶化して、まるでダイヤモンドかクリスタルの粒をまとったかのよう。アーティストが海からトルソを引き揚げる映像は、出産や洗礼の儀式を連想させる。
中国人アーティストのGu Dexinは、シャトレに建つSaint Jaquesの塔に、ビデオ映像を投影する。映像は、同じ塔を青空の下で撮影したもの。夜の塔の上に、昼の塔の映像がだぶる。
おそらく、パリっ子の間でも一番人気だったのが、池田亮司氏によるモンパルナス・タワーのインスタレーション。夜空に向けて照射したライティングが、光の束となって、タワーを幻想的に覆う。辺りに流れるのはミニマル・ミュージック。とくに大きく変化はないけれど、まっすぐ夜空に向かってのびる光の筋を見上げ、音の振動に身をゆだねているうちに、静かなトランス状態におちる。これぞzenの世界。
この日に限って天気予報は的中し、空はどんよりと雲が立ち込め、かなり肌寒い。それでもアートに飢えたパリっ子たちは、しっかり厚着して出かける。いつも思うことだけれど、self educationにかけてはパリジャン・パリジェンヌは本当に熱心だ。
>> 10/04>> Quai Branly! Quel Branly!
パリに数あるミュゼの中でも、Quai Branlyは特殊。アジア・アフリカ・オセアニア・南北アメリカなど、非ヨーロッパ文化に目を向け、民俗学や文化人類学をテーマにエキシビションを開催する。個人的にはエスニック系にはあまり興味がわかず、足が遠のいていたのだけれど、実際に行ってみたら・・・なんて素敵なミュゼだろう!
まず、庭がいい。手入れのゆき届いた上品な庭園ではなく、粗野で素朴な庭は、熱帯のシダがあるかと思えば、日本庭園でみるような石橋があったりと、ミュゼの個性を反映している。ちょうど今の時期は樹木の葉が色づき、身の丈を超えるススキの穂が風になびいて、さながら侘び寂びの世界。
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美術館から出てきた子どもたちが「コキアージュ!コキアージュ!」と騒いでいたので、何事かと足もとを見たら、化石のように貝殻が埋まっていた |
美術館そのものは赤・黄・茶の凹凸がついた近代建築で、野趣あふれる庭とのコントラストがみごと(さすがジャン・ヌーヴェル!)。張り出した屋根の下には、LEDのパイプがニョキニョキ生えていて、夜になると天井を星あかりのようにほのかに照らす。
庭に面したミュージアム・カフェは、ガラス窓から光がたっぷり差し込んで開放的。食事をしながら、庭を思う存分堪能できる。椅子のオレンジストライプが、シンプルなインテリアにアクセントを加える。そして何より嬉しいのは、プージョランのパンを使ったタルティーヌが食べられること!タルティーヌのためだけに来ても、おしくない。
この日はちょうど大雨だったのだけれど、タイミングを見計らったかのように、帰るころには雨があがっていた。しかも、外に出ると見事な虹!
いっぺんに、Quai Branlyが気に入ってしまった。
>> 10/03>> ベルシーでワインでも
天気がいい日は、サンドイッチを買って、遠足気分でベルシー公園へ行ってみよう。手の込んだ花園や凝った建物はないけれど、パリの他の公園にはない「のどけさ」がある。そして、少々ワインの香りも。
12区はかつてワインの醸造所や倉庫が集中していたエリアで、ミッテラン大統領のグランプロジェによって、新しく生まれ変わった。ベルシー公園もその恩恵のひとつ。園内にはいまもブドウの樹が栽培されていて、秋には収穫され、ワインとなって、奥にある商業エリア:ベルシー・ヴィラージュでサーヴされる。
レンガを組んだサイロ、風にそよぐブドウの葉、石畳に残るトロッコのわだちの跡。ちょっとした小旅行にきた気分。シャンゼリゼの華やかなイメージとはかけ離れているけれど、これもパリ。
そういえばそろそろ収穫の時期、ブドウの出来はいかがかしら・・・とのぞいてみると、何だか具合がおかしい。シワだらけの小粒の果実は、とても「たわわ」とは言い難い。作業員のお兄さんに尋ねたところ、ベルシーのブドウは完全ビオ栽培で、毎年試行錯誤を重ねているため、収穫の差が激しいらしい。今年は残念ながらハズレ年。2008年のベルシー・ワインは拝めなさそうだ。
セーヌ川に面した側には、流線形の橋がのびる。セーヌにかかる橋のなかでもひときわ目立つ橋のむこうには、もうひとつのお気に入り:国立公園が待ち構える。ブドウ畑の傍らでサンドイッチをほおばりながら、少々読書をして、陽が傾き始めたころに橋を渡って、夕陽を受ける国立図書館をながめる。ベルシーに来ると、何もない平日も冒険になる。
>> 10/01>> 遅ればせながら、ついに。
パリ3ヶ月目にして、ようやく登場。無敵のNAVIGO!
ICチップが内蔵されていて、改札口にかざすと、ピーン♪という心地よい電子音とともに、ゲートが開く。メトロはもちろん、バスやRER(鉄道)でも使える。
日本のSUICAと違うのは、乗った分だけ運賃が差し引かれるのではなく、1週間もしくは1か月単位で一定の金額を支払う。期限内であれば何回でも乗り放題、というシステム。いちいち切符を買う必要がないし、期間単位でチャージするので(期限を忘れなければ)残高不足で改札に引っかかることもない。ハイテクが苦手で、いまだにカルトオランジュを愛用する一部のオールドスクールを除けば、ほとんどのパリっ子がNAVIGOユーザーだ。
なぜ今まで持っていなかったというと、基本的にNAVIGOを購入するにはフランス滞在許可証が必要だから。私の場合、VISAの関係で滞在許可証がもらえないので、まともに窓口に行って「NAVIGOください」と言っても、門前払いを食ってしまう。
許可証がなくても買えるNAVIGO DECOUVERTEというのもあって、5ユーロのディポジットを払えば誰でも購入可能。・・・と聞いていたのだけれど、こいつを扱っている窓口がなかなか見つからない。来仏当初はフランス語に自信がなかったので、買えるかどうか聞くにも聞けず、ひょっとするともう扱ってないのかも、と勝手に想像してあきらめていた。
ところが。
メトロのサン・ラザール駅で、カルネ(10枚つづりの切符)を買おうとしたら、目の前に「DECOUVERTEあります」の案内!やっと見つけた、やっと買えた!
NAVIGOを手に入れたことで、いちいちカルネを買う煩わしさから解放されただけでなく、ようやく一人前の「パリの住人」になれた気がする。まぁこれもフランス語が上達した成果、ということにしておこう。
うれしくなって、ついでに地図も新調してみた。すべての通りの名前、番地がバッチリ区ごとに記載されている。これも、パリジャン・パリジェンヌの必需品。