>> 10/19>> 不思議の国のミュゼ
ルーヴルの隣にある装飾美術館:Les Arts Decoratifは、服飾・宝飾品といった「モード」、家具やインテリアを中心とする「デザイン」、ポスターやCMなどの「広告」を展示するミュゼ。日常生活を「decoratif=ちょっと素敵に飾る」ものを扱っている。生きるために決して必要不可欠ではないけれど、こういうものがないと人生は楽しくない。だからだろうか、すでに3回も足を運んでしまっている(かなりの投資!)。
Les Arts Decoratifで、私が「秘密の部屋」とよぶ場所がある。東側:ルーヴルに近いほうにあるモードフロアの2階、外部の光をシャットアウトした小部屋の中に入ると、目もくらむようなアクセサリーの類が、暗闇に浮かぶ星屑のようにまたたいている!その美しさに思わずため息。
街のショウウィンドウと違うのは、それらが年代ごとに分けて展示してあって、いつごろからどんな素材が・どんな用途で・どんなテクニックで使われるようになったのか、分かりやすく解説してあること。バックグラウンドを知ると、外見だけではない、アクセサリーの「内面の美」が見えてくるのが面白い。20㎡ほどの小部屋なのだけれど、一度魔法にかかってしまうとなかなか外に出られない。まるで、ウサギの穴に落ちたアリスか、オズの国に迷い込んだドロシーのようになる。
西側:デザイン関連フロアだって面白い。40年代から80年代までの椅子が山積みになっていて、見覚えのある椅子やユニークな椅子を探し出す感じが楽しいし、実際に、イームズやジョエ・コロンボの椅子に座ることもできるのもいい。
とどめは、ミュージアムショップ「107 Rivoli」。いわゆるデザイン系のアクセサリーや雑貨や食器などが置いてあって、ちょっとしたプチミュゼ状態。しかも美術館とは入口が別なので、入場料を払わなくてもうっとりできる。
ここに来るといつも夢中になってしまい、気がつけば閉館ギリギリ。係員のおじさんに引率されて帰るような状態が続いている。来月にはソニア・リキエルの特別展示が始まる。4回目も、長い滞在になりそうだ。
>> 10/17>> ノートルダムのタイミング
人気観光名所のノートルダム。いつも人でごった返しているけれど(ときにはうんざりするくらい)、それでも近くを通りがかったときには立ち寄りたくなる。そのぐらい、ここのバラ窓は美しい。
何度か通った結果、夕暮れ時のノートルダムが一番好きだ。セーヌ川に黄金の影をのこしながら太陽が沈みかけてゆくころ、南のバラ窓から斜陽が差し込むさまといったら!もともとステンドグラス自体、ハッとするほどに美しいのだけれど、この時間帯だけは、ステンドグラスは「物体」ではなく「経験」になる。舞台の幕が静かにあがって、スペクタクルが始まるように。
夕陽を合図に、昼間は薄暗かった聖堂が、ふぅっと息を吹き返す。ゴシックの壁に、温かく幻想的な光が踊る。天井の高いドームが作る開放感、光に満たされた空間、鼻腔をくすぐるお香のにおい。聖堂の内側、空間そのものが「特別」になり、目に見えるものを超えたところに「美」が生まれる。これこそまさに聖堂が意図したところであって、それは我々を畏敬の念にかりたてるとともに、深い慈悲で迎えてくれる。
ちなみに、明け方・ちょうど日の出の時間には、聖堂奥のアプスに掲げられたステンドグラスが紅く燃えるように輝き、ドームの天井をマゼンダ色に染める。ノートルダムは、朝からいきなりドラマティックだ。
>> 10/13>> 工事中。
Palais Royaleといえば、ダニエル・ビュランの「縞々」が有名。設置から22年たって、せっかくのストライプも剥げかかってきたということで、現在改装工事の真っ最中。久しぶりに行ってみたら、囲いがしてあった。
例の縞々は完全に囲われてしまっているのかというと、そうでもなくて、囲いのところどころに切り抜かれた「窓」から覗くことができる。ストライプの枠に、色つきガラス。赤やオレンジやブルーのフィルターごしに見る縞々は、さまざまに表情を変えて、なかなか面白い。
工事中でも手をぬかないところが、いかにもフランスらしい。