>> 11/30>> 寒い夜には・・・
陽が暮れるのがぐんと早くなった。しかも今日は一段と冷える。早めに散歩を切り上げて家に帰ろうか・・・
と思った瞬間、フロマージェリーに出くわしてしまった。
グルネル通りのフロマージェリーBarthelemyは、チーズ職人として初めてAOCをとったバルテレミー氏のお店。入口の扉を開けるまでもなく、外までカビの匂いが漂ってくる。これは本物だ。今日はがまんして、後日あらためて・・・と思っていた矢先、ウィンドウに並ぶヴァシュラン・モンドールに目が止まった。
東京にいるときからチーズが大好きな私にとって、冬の風物詩といえば、ヴァシュラン・モンドール。樅の木の樹皮で巻かれた、ウォッシュチーズ。これがなくては冬は越せない。かなり匂いが強いので、バスに乗り合わせた人々には申し訳ないが、これは買って帰らなくては。
文字通り、山のようにチーズが並べられているので、店内はかなり手狭に感じられる。壁にそってコの字型に並べられたガラスケース、その上にさらに棚、さらにその奥にも棚。薬局の棚がすべてチーズで埋め尽くされている感じ、とでもいおうか。他にもチーズの有名店はあるけれど、ここは職人的だ。注文に合わせてチーズを切り分ける店員の手つきも年季が入っている。
日本で買ったヴァシュラン・モンドールは、木枠の箱に入っておしまい、なのだが、フランスのは木枠の内側にさらに樹皮が巻かれ、チーズに樅の香りがしっかり移っている。とろりとした感触。さすがはBarthelemy、熟成具合も完璧だ。
そうだ、この前ブルゴーニュで買ったワインをあけよう。夜が長い冬は、こうして家でゆっくり過ごすのがいい。
>> 11/25>> There is a Light
5区・アラブ世界研究所に初めて来たときは夏まっさかりで、白銀の光が外壁に乱反射して、まるで映画に出てくる近未来都市の建物のように見えた。ただ、あいにくその日は月曜日で、中に入ることはできなかった。
2度目に来たときは、暑さが和らいだ初秋。傾きかけた太陽が、夕暮れ前のラストスパートと言わんばかりにオレンジのスポットライトを投射して、ガラスのファサードを光で包みこむ。ファサードから差し込む光は、幾何学模様のブラインドを通して建物内部を貫き、床に、壁に、繊細な影をおとす。豪奢なダイヤモンドのドレスの下に隠れた、レースのベール。
それからというもの、時間帯を変えては通っている。光の加減によって、建物はさまざまに表情を変えるから、何度行っても飽きることがない。
ジャン・ヌーヴェルの建物には、いつも光があふれている。晴れの日はもちろん、曇りの日も、雨の日も。イスラム文様のブラインドであえて影を作ることで、逆説的に内部に光をゆきわたらせる。私は決して信心深い人間ではないけれど、アラブ世界研究所にくるたびに、絶対的な存在を感じずにはいられない。人はそれを神と呼ぶのかもしれないが、私にはそんなことはどうでもよくて、ただ、ここでこうして光にくるまれて、神々しいものに触れたような気分になれるのがたまらなく好きだ。悲しいときも、朗らかなときも、光はいつもそこにある。
屋上はテラス付レストランになっていて、ここから眺めるパリの風景もなかなかのものだ。1階のカフェでは、パリでも珍しいアラブのお菓子が食べられる。ツーリスト目撃率も、他の観光名所と比べると格段に低い。だから、本当は誰にも教えたくないのだけれど。
夜はすこしドレスアップ