>> 11/09>> Mon Quartier, Bastille
週末、旅先からパリに戻ってくると、不思議なことに「ああ、帰ってきた」という思いがこみ上げる。駅や空港でフランス語を耳にするとホッとするし、メトロを出てバスティーユの塔が視界に飛び込んでくると、なんだか安心する。勝手な思い込みかもしれないが、パリは着実に「私の街」になっている。
バスティーユは面白い場所で、ゴシックに身を固めた少女たちがアジア食材店で揚げ煎餅を買っていたりする。ちなみにこの食材店では、パリでは貴重品のカツオ節が手に入る。
メトロ1番線のホームからも見える運河は、お気に入りの映画「Before Sunset」の撮影で使われた場所。「アメリ」で有名な10区のサン・マルタン運河よりも、個人的にはバスティーユのほうが穏やかで、断然素敵だと思う。
Thailandeurs通りのカフェレストラン「Au P'tit Cahona」では、とびきり美味しいタジンが食べられる。移民の街:パリにはいたるとこににクスクス屋があって、ガイドブックに必ず載る有名店にも行ったけれど、私はここが一番好き。グラグラに煮えたタジンのスープは、パンを浸さずにはいられない。しかもランチは、タジンorクスクスにミントティーがついて9ユーロ! 他ではこうはいかない。
パリは各区ごとに個性があって、それぞれに違う魅力がある。だからパリの印象も、どこに住むかによって変わる。角のカフェが気に入ったから、という理由でアパルトマンを選んだ人もいる。それぞれが描く、それぞれのパリ。
>> 11/07>> 喜びのうた
たとえば雨上がりの午後、雲の切れ間から差し込む太陽でマレの家々が照らされるのを眺めること。
セーヌの向こう側に隠れた夕日を受けて、真っ赤に燃えるように染まるルーブルに見とれること。
明日もし晴れたら、ヴォージュ公園の並木の下で、静かに読書しようと思いをめぐらせること。
パリで暮らす喜びをかみしめながら、この幸せがいつまでも続けばいいのに、と願う。
>> 11/05>> パリの小さな秋
7区。ラップ通り。ハッとして立ち止まる。視界の片隅で、「何か」がシグナルを発している。辺りを見渡して発信源をたどってゆくと、並木道のむこうから、見事なアールヌーヴォー建築が、いた。
パリのアールヌーヴォー建築を代表する、Jules Lavirotteの設計。 |
バルセロナ、ウィーンと旅行して以来、アールヌーヴォーが気になって仕方がない。パリのアールヌーヴォーといえば、ギマールによるメトロのエントランスが有名だけれど、探してみると他にもたくさんあることに驚く。どちらかというと東側よりも西側、右岸よりも左岸に多い。ガイドブックに大きく取り上げられるわけではないけれど、歩くたびに「小さな発見」があるので、散歩のしがいがある。小さいけれど、見つけたときの喜びは最大限。
さらに歩みを進めてゆくと、少し奥まったところにもまたひとつ。見つけられるのを待っていたかのように、ひっそりと佇む建物。まるで、見知らぬ客を温かく迎える老婦人のようだ。
>> 11/02>> これが噂の・・・
日曜の朝だというのに、メトロ12番線は混雑気味。Porte du Versailleの駅が近づくにしたがって、乗客がそわそわし始める。なんといっても、今日はショコラの祭典:Salon du Chocolatの最終日!カカオの香りに導かれ、大勢のパリっ子がやってくる。
東京でもバレンタイン直前行事として恒例になりつつあるけれど、本家本元:パリのSalon du Chocolatは規模が違う。おもちゃショウがすべてショコラになった、と言えば分かるだろうか。ブースからブースへ渡り歩き、試食をしながら、あれが欲しいこれが美味しい、と物色する。子どもから初老の男性まで、誰もがキラキラと目を輝かせる。
試食に対して気前がいいのは、さすがフランス。食べる方も遠慮がない。個々のポーションもかなり大きめで、食べ応えも十分。だから、本当ならそこで満足なはずなのだけれど、それでも買いたくなるのはカカオの魔法か、それとも単なる私の浪費癖か。いや、周りを見渡してみれば、両手にショコラの袋を抱えた人がいっぱいいるではないか!
戦利品のなかで、とくに気に入ったのがこれ。綿棒のようなスティックのショコラ・バーを、温めたミルクにいれてクルクル。ミルクの熱でショコラが溶けて、やがてショコラショーのできあがり。遊び心だけではなく、使われているカカオがbio栽培なのもニクい。
フランス人にとってのショコラは、スウィーツの四番バッター。日常に食べるチョコはキットカットだったりするけれど、ショコラは特別。だからこそ本当に美味しいものが食べたいし、本当にいいものを手に入れたいし、少しぐらい値段が張ってもかまわない。「ハレ」と「ケ」をちゃんと区別して、「ハレ」の食べ物に対して情熱を注ぐメンタリティが、フランスが美食の国たる理由だと思う。日本の場合、ショコラの「ハレ」がバレンタインだけなのが少し残念だ。