>> 04/04>> Time after time of Jazz
ケ・ブランリー美術館で、ジャズに関するエキシビションがあるというので、見に行く。
およそ1世紀にわたるジャズの系譜を振り返るというもので、タイトルもずばり「Le Siecle du Jazz=ジャズの1世紀」。18世紀の黒人霊歌からディキシーミュージック、ハーレムルネサンス、スウィング、ブギウギ、bebop、フリージャズetc... 音楽の変遷を時系列的に、なおかつ「アートとの関連性」においてとらえる、というのがポイントだ。そのため会場には、レコードジャケットやライブ映像の隣に、同時期のアート作品が並列して展示されている。
ジャズと音楽の関連性。
文字にするとどうってこともないように見えるが、これが結構面白い。
たとえばカンディンスキは、写実にたよらない「絶対的な芸術」として、抽象画というジャンルを確立したが、彼がモデルにしたのは何よりも音楽、とくに、当時の音楽シーンに革新をもたらしたジャズの存在だった。ジャクソン・ポラックにしてもしかり、マティスにしてもしかり。ジャズはアートの被写体として描かれ、アートの手本として崇められ、ミューズとして芸術家たちを鼓舞してきたことが、この展覧会で分かる。
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「benny goodmanも愛用! |
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David Hammondによる |
コルトレーン=coal + train |
ガラスケースに仕込まれたスピーカーからかすかに聞こえるビートにスイングしながら、迷路のように細かく仕切られた会場を歩きまわっているうちに、とある思いが胸をつかむ。
「あぁ、JAZZは生きていたんだ」。
きっかけは、1枚のポスターの展示だ。
1924年の大晦日、パリで行われたカウントダウンパーティ。ポスターをデザインしたのは、巨匠ピカソ。NY出身のジャズバンドThe Georgiansやエリック・サティといった名前と一緒に、フランシス・ピカビアやマン・レイといったアーティストたちの名前が並ぶ。
この1枚のポスターから想像を広げてみる。
パリ・・・シャンゼリゼ・シアター・・・深夜23時・・・時代のフロントラインに立つパイオニアたち・・・シャンパンのボトル・・・新年へのカウントダウン・・・そして時代が変わる瞬間、彼らと時をともにしたのが、ジャズ。それはCDに記録された「レジェンド」ではなく、当時を生きた若者たちの応援歌、彼らの創造性を刺激した「ライブ=生きもの」だったのだ。
そもそもケ・ブランリーといえば、世界各地の文化を民俗学的に紹介する美術館。ここに来るまでは、「なぜケ・ブランリーでジャズなのか?」と、少々疑問に感じていたけれど、その謎が解けた。ジャズは音楽の歴史においてはもちろん、社会情勢を大きく揺さぶった「現象」だった。かつてのルネサンスのように。あるいは、大航海時代のように。そして、我々が生きる現代のライフスタイルは、ジャズがもたらした革新の上に成り立っている。
Bebopとは何ぞやという解説もなければ、アーティスト紹介もない。展示されている作品も、芸術という観点で見るとものたりない気がしなくもない。ただ、ジャズを「文化」としてとらえたケ・ブランリーの展示は、ジャズが生きていることを肌で感じることができる素晴らしいエキシビションだと思う。
>> 04/02>> 公園の風景
11区のとある公園。
陽射しは温かいが、風はまだ少し冷たい。でも1日のエネルギー消費のピークをむかえた子供たちはまったく気にしない。
7歳ぐらいの女の子が、そばにいた男性に話しかける。「あたしね、ジャングルジムを一人で登れるのよ。見てて!」と宣言して、女の子はジャングルジムのほうへ一目散にかけてゆく。
男性は、おそらく仕事の途中でたまたま公園を通りかかっただけなのだろう、分厚いファイルと携帯電話をかかえている。それでも急ぐ様子も見せず、連れの女性に目で軽く合図して、自分の娘でもない女の子がジャングルジムをよじ登るのを見守る。彼にはなんの義務もないけれど、まるで自分が目を離してしまったら彼女がうっかり足を踏み外すのではないか、とでも言わんばかりに、少女の動きを見届ける。
女の子がジャングルジムを頂上までのぼりきり、縄ばしごをわたって、滑り台から降りてきた。「ブラボー!」男性が空いたほうの手を広げて温かく迎える。女の子は誇らしげに笑みを返すと、ゴムまりがはずむようにどこかへ駆けて行った。